天下無双の究極遊戯

Vtuber戦国時代を斬り進む尾張の女武将

TRPG(リプレイ小説)

最終話、もっと食べたい

この世の者ならざる異形の怪物を目の当たりにした児嶋は、我を失った。 己の肉体を噛み砕き、やがて歯列のみとなった石沢の姿も衝撃的だったが、それを遥かに上回る恐怖――夢と現の境が消え去ってしまったかのような無秩序な様に児嶋は震え、訳も分からず未だ…

九、ビロードの闇

「雛芥子様ですね、お待ちしておりましたわ。どうぞ上がっていらしてください」翌日、指定されたマンション内のとある一室で児嶋たちを迎え入れてくれたのは、物腰穏やかな妙齢の女性だった。「あら、お二人でいらっしゃるとは思いませんでしたわ」口調は柔…

八、接触

マンションへ帰宅したそのすぐ後、児嶋は自らのスマートフォンを取り出すと、ヒカルから受け取ったメモに記載された電話番号を入力し、カウンセラーである韮崎との接触を早速と試みた。「……はい、こちら韮崎です」ほどなくして受話口から聞こえてきたのは、…

お寿司食べたい

衝動というものは、大抵の場合、なんの前触れもなく唐突に訪れ、人々の心をどうしようもなく揺るがせる。 感情の起伏が一見、稀薄である児嶋にとってもそれは例外ではなく、今まさに酢飯と海鮮――要するに、寿司を食らいたいというどうしようもない衝動的欲求…

大量受9悩処

新たなる衝動に、児嶋は苛まれていた。 先日のような、寿司が食べたいなどという生半可なそれではない。 なにもかもをかなぐり捨てて、成就したいと願うほどに膨れる欲求は、日に日に勢いを増して全身を――否、心までをも蝕んでいく。「……ッ、は……」真夏の日…

七、患者

待ち合わせ場所に現れた女は、隣に立つひろみに負けず劣らずの明るい笑顔を浮かべていた。「本日は突然お呼び立てしてすみません」言いながら児嶋が名刺を渡すと、女は相変わらずにこにこと満面の笑みを浮かべながら、気にすることはないと実にさっぱりとし…

六、協力者

腹が減ったので軽食でも口に入れさせろとごねる雛芥子をどうにか宥めつつ店内を見回すと、件の女をボックス席の片隅に見つける事が出来た。「石沢さん、ですか。先ほど、連絡をしたものですが……」言いながら名刺を差し出すと、兄とよく似た明るく溌溂とした…

五、摂食障害

翌日の朝、雛芥子の入院先である病院に顔を出したところ、執刀を担当した外科医が児嶋の姿を視界に入れるや否やこちらへと駆け寄り、酷く深刻そうな声音でそっと手術の結果を耳打ちした。「触ったら確かにあるのがわかるんですが……。開けても、ないんです」 …

四、手掛かり

昼間は刑事である雛芥子が同行していた為に多少の強引な捜索も許されてはいたが、今は児嶋ひとりである。 どうにか怪しまれずに石沢の部屋を物色する事は出来ないだろうかと考えた結果、ここは大家の元を尋ねてみるしかないだろうと思い至り、児嶋はインター…

三、腹中の怪物

乗車したタクシーから飛び出すや否や、児嶋はアパートの階段を駆け上がる。「雛芥子さん!」インターフォンを鳴らす手間さえ惜しんで辿り着いた部屋の扉を無遠慮にこじ開けたところ、靴が脱ぎ散らかされている三和土にて蹲っている雛芥子の姿を見つけること…

ニ、最初の探索

繁華街を僅かに反れた先、銀行や大手商社のビルが立ち並ぶ通りの角で見つけたコーヒーチェーンにて、児嶋と雛芥子は向かい合っていた。 先程味わった恐怖の為か、喉がひりつくほどに乾いている。 だが、飲み物を口に含もうとするたび、むき出しの歯列と化し…

一、消えた男

ビジネスホテルや多種多様な飲食店が立ち並ぶ繁華街の一角、とある中華料理店の入り口にて、児嶋哲はまるでそこに根を張った大木のように無機質に、そして静かに直立していた。 昼時ということもあり、ちょうど真上から力強い日差しが降り注いでいたものの、…