天下無双の究極遊戯

Vtuber戦国時代を斬り進む尾張の女武将

TRPG(短編小説)

消えない衝動

とある閑静な住宅街で突如巻き起こった爆発事件の被害者に児嶋がいると知ったのは、病院を訪れるほんの数時間前の事だった。 発生から約一週間。ようやく容体も安定し、口もきけるようになったというので鷹山は事情聴取を行うべく入院病棟を訪れたのだが、彼…

今夜の夜食は激辛がいい

大下は、赤く染まった自身の頬を隠すように深く俯いていた。 ――快気祝いに好物を馳走してやる、と。 少し遅めの昼食を取るべくデスクを離れようとした午後三時、隣席の鷹山にそう誘い出されて辿り着いた場所は、スーツ姿の中年男性二人が連れ立って訪れるに…

深海の夢

患者の男は言った。 ここのところ、深海を漂う夢ばかり見ているのだと。 その海底に広がる古の都市は、どんな美術館で目にする芸術よりも精巧に創られていながら、人工物らしさがないのだという。 神秘的で、美しいそれらを眺めているうち、ひどく懐かしいよ…

鷹山の日常

自動ドアを潜ったその瞬間、耳を劈く騒音は遠のき、心地よい雑踏が疲れた鼓膜へと染み入るように馴染み始める。 鷹山は抱えた紙袋から板チョコを一枚取り出すと、行儀が悪いのは重々承知していながらも包装を破いてそれを齧りつつ、鼻歌交じりに繁華街へと歩…

monochrome

額から流れ落ちた汗は顎先を伝い、コンクリート上へと滴り落ちていく。 信号待ちのその最中、頭上から燦々と照り付ける夏の日差しに目を細めつつ、児嶋は湿った手の甲でとめどなく溢れるそれを拭い続けていた。 病院から然程離れていない場所での往診なのだ…

具なしのミネストローネ

「これは、どういう事でしょう……」目の前に置かれた器の中身を覗き込みながら、児嶋は困惑したような声で尋ねつつ、正面に腰を下ろした雛芥子の笑顔を上目で窺った。「どういう事もなにも、ミネストローネだろ」 「ですが……」見下ろしたスープ皿の中身は確か…